【医師監修】妊娠中の薄毛の原因は?安全な対策や抜け毛の時期を紹介!

妊娠中はさまざまなトラブルが生じることがありますが、髪の毛においては薄毛の症状がその一例です。

「妊娠前より髪が薄くなったかも……」といった不安を抱える妊婦さんもいるでしょう。

本記事では、妊娠中に薄毛が進行する主な原因や安全にできる対策方法、抜け毛が増えやすい時期について、医師監修のもとでわかりやすく紹介します。

薄毛に悩んでいる方や、これから対処したい妊婦さんは、ぜひ最後までご覧ください。

妊娠中に薄毛が進行する原因は?

妊娠中に薄毛が進行する根本的な原因や詳細なメカニズムは解明されていませんが、一般的にはストレスや自己免疫機能の低下によって生じると考えられています。

なお、妊娠中に体毛が濃くなると男の子、薄くなると女の子が生まれるといった性別ジンクスがありますが、赤ちゃんの性別によってホルモン分泌や体毛の変化が左右されることはないと見られ、医学的根拠はありません。

ここでは、妊娠中に薄毛が進行するとされる主な原因を詳しく紹介します。

女性ホルモンバランスの乱れ

妊娠中は、女性ホルモンのエストロゲステロンとプロゲステロンの分泌量が通常時より増加します。

エストロゲンは、髪の成長期を延ばし、毛髪を太く健康に保つ役割を担っています。

一方、プロゲステロンは、エストロゲンと協調して髪の成長サイクルを整える働きがあるホルモンです。

妊娠後期は、エストロゲステロンとプロゲステロンが急激に変動する傾向にあります。

こういったホルモンバランスの変化に伴い、髪の成長が一時的に停滞し、抜け毛の一時的な増加症状が見られるのです。

参考:【医師監修】妊婦さんの抜け毛の原因は?妊娠中・産後の抜け毛対策|エレビット

鉄分やビタミン類などの栄養不足

妊娠中は胎児に鉄分やビタミン類が優先的に供給されるため、母親の体内は妊娠前に比べ栄養が不足する傾向にあります。

特に、鉄分・ビタミンB2・ビタミンB6・亜鉛・葉酸が不足すると、毛母細胞の分裂機能が低下し、髪が細くなり薄毛の症状を促進します。

参考:妊娠中に抜け毛がひどい原因とは?対策やいつまで続くのかも解説|快適生活

胎動などによる睡眠不足

妊娠後期になると胎児の胎動が活発化し、寝返りがしにくくなるほか、頻尿やむくみ、腰痛などさまざまなことが重なって、睡眠不足になる傾向があります。

しかし、睡眠中に分泌される成長ホルモンは、髪の再生・修復に欠かせません。

睡眠不足が続く場合や睡眠の質が低下している場合、髪の十分な成長を妨げ、薄毛が加速します。

参考:妊娠初期に抜け毛が増える原因を紹介|妊娠中にできる抜け毛対策や抜け毛がいつまで続くか解説|ベアAGAクリニック

皮膚の乾燥

妊娠中のホルモンバランスの変動は、皮脂分泌量にも影響を与え、皮膚が乾燥しやすくなります。

妊娠中のマイナートラブルと睡眠に関する研究では、妊娠初期に皮膚の乾燥を感じる方が多いと公表されています。

また、妊娠後期になるにつれて、胎児への水分補給や羊水量の維持のために大量の水分が必要になり、意識しないと水分不足に陥りがちです。

特に、頭皮の乾燥に関しては、乾燥した状態が続くとバリア機能が低下し、フケやかゆみが増加します。

かゆみがひどくなり、頭皮をかきむしってしまうと傷がつき、炎症が起こるなど毛根に悪影響を与えます。

参考:妊娠中は肌が乾燥しがち!肌トラブルの原因を知って上手にケア|アラウ.ベビー

慣れない妊娠生活によるストレス

妊娠生活では、おなかの赤ちゃんがしっかりと育っているか、産後の生活がどうなるかなど、さまざまな精神的ストレスがかかりがちです。

過剰なストレスがかかると自律神経のバランスが崩れ、交感神経の優位状態が続き、アドレナリンなどのストレスホルモンが分泌されます。

ストレスホルモンが過剰分泌されると、血管が収縮し、頭皮への血流が低下します。

これによって、毛母細胞に必要な酸素や栄養素が十分に行き渡らず、ヘアサイクルが乱れ、薄毛が促進されるのです。

他にも、ストレスホルモンの一種であるコルチゾールは、過剰に分泌されることで頭皮の炎症反応の促進や血行不良を引き起こし、抜け毛リスクを高めます。

参考:妊娠初期に抜け毛が増える原因を紹介|妊娠中にできる抜け毛対策や抜け毛がいつまで続くか解説|ベアAGAクリニック

妊娠中に起こる薄毛のピークはいつ?

妊娠中の薄毛が顕著になる時期は、妊娠後期にあたる妊娠28週〜36週頃(妊娠8カ月~9カ月に相当)です。

おなかが大きくなり身体への負担がピークを迎えると同時に、ホルモンバランスも大きく変動します。

特に、エストロゲンやプロゲステロンなど女性ホルモンが急激に増加し、身体が変化に対応しきれず、一時的に抜け毛が増えやすくなります。

ただし、妊娠後期に起こる薄毛はあくまで一時的なものであり、産後にホルモンバランスが安定すれば徐々に改善するケースが大半です。

しかし、産後に薄毛が進行する方も少なくありません。

出産にともない女性ホルモンが急降下し、ヘアサイクルが一斉に休止期に入るため、大量に髪の毛が抜ける方もいます。

人によって多少の差がありますが、多くの場合は出産後2カ月〜4カ月は、通常の2倍〜3倍抜けることがあると言われています。

妊娠中から出産直後1年間までは薄毛になるリスクが潜んでいるため、適切な抜け毛対策が必要です。

参考:妊娠中や産後に髪が薄くなった気がします。回復するのでしょうか?心配です。|ひたちなか母と子の病院

妊娠中の薄毛対策

妊娠中の薄毛対策

妊娠期の薄毛は、生活習慣や日々のヘアケアを見直すことである程度改善できる場合があります。

ここでは、妊娠中の薄毛の対策としておすすめなセルフケア方法を紹介します。

軽い有酸素運動を取り入れる

妊娠に関する不安感やストレスを軽減する方法として、軽い有酸素運動が有効です。

負担をかけすぎるとおなかが張るなどのつらい症状が出てくるため、週3回~4回、1回あたり20分~30分程度を目安に取り入れましょう。

具体的には、以下のような負担の少ない続けやすい運動がおすすめです。

  • 妊娠中でも安全に行えるマタニティヨガ
  • 平坦な道を歩くウォーキング
  • 無理のない妊婦体操や水中ウォーキング

運動によるリラクゼーション効果でストレスが軽減され、交感神経の過剰な働きを抑えることで、コルチゾールの分泌も低減されます。

結果として、ホルモンバランスが安定し、抜け毛の進行を抑える効果が期待できます。

参考:妊活中・妊娠中にAGA治療はできる?胎児への危険性について解説|AGA専門医が教える発毛ブログ

質の良い睡眠を心掛ける

妊娠中はホルモンバランスや身体の変化により、眠りが浅くなったり途中で目が覚めやすくなる傾向にありますが、髪の健康を保つ上では質の良い睡眠が大切です。

睡眠の質を上げるためにおすすめの対策は、以下のとおりです。

  • 妊婦用抱き枕で骨盤や背骨をしっかり支える
  • 就寝2時間前から携帯電話の使用を控える
  • 温かいノンカフェイン飲料を飲む

理想的な睡眠時間とされる1日7時間~9時間のうち、2時間以上の深い眠りを確保できると、成長ホルモンがしっかり分泌され、ダメージを受けた毛髪や頭皮の修復がスムーズに進みます。

参考:妊娠初期に抜け毛が増える原因を紹介|妊娠中にできる抜け毛対策や抜け毛がいつまで続くか解説|ベアAGAクリニック

バランス良く栄養を摂取する

妊娠中の薄毛対策として、食事やサプリメントを通じてバランス良く栄養を摂取することも重要なポイントです。

髪の健康を保つためには、以下のような栄養素をできる限り意識して摂取しましょう。

栄養素1日目安量主な食品効果
18mgレバー、赤身肉、ほうれん草ヘモグロビン合成を助け、毛母細胞の活性化に貢献
ビタミンB群1.4~2.0mg納豆、卵、全粒穀物エネルギー代謝を促進し、髪の細胞分裂をサポート
亜鉛9mg牡蠣、肉類、ナッツタンパク質合成を支え、抜け毛を予防
葉酸400μg緑黄色野菜、豆類DNA合成を促進し、健康な髪の成長をサポート
タンパク質50g魚、肉、豆腐髪の主成分ケラチンの材料となり、強い髪を育成

髪の毛の栄養素は単体で摂るのではなく、日々の食事の中でバランスよく取り入れることが大切です。

つわりなどにより食事で補いきれない場合は、医師の指導のもとで妊婦・授乳婦向けのマルチビタミンや鉄分サプリメントを併用するのも一つの手段です。

ただし、授乳中に推奨されない成分が含まれるサプリもあるため、必ず自己判断ではなく専門家へ相談するようにしましょう。

女性の薄毛を食事で改善!今日からできる食生活の見直しと対策

参考:妊娠初期に抜け毛が増える原因を紹介|妊娠中にできる抜け毛対策や抜け毛がいつまで続くか解説|ベアAGAクリニック

簡単な頭皮マッサージを習慣化する

毎日5分〜10分程度の簡単な頭皮マッサージをセルフケアとして取り入れると、頭皮の血流が促進され、毛根に十分な栄養が行き渡りやすくなります。

頭皮マッサージの手順は、以下を参考にしてください。

  • 頭頂部から側頭部、後頭部へと、指の腹で円を描くようにやさしくマッサージ
  • 一定のリズムで、頭全体をしっかりと押す・離す動作を繰り返す

上記以外にも、気持ち良く感じられる方法を見つけ、無理なく習慣化することを意識しましょう。

参考:妊娠中にヘッドスパを受けても安全??|Suimin Lab.

育毛剤を活用する

産後や妊娠中の抜け毛対策として、育毛剤の活用も効果的な対策の一つです

育毛剤には、毛根の活性化や血行促進、頭皮環境の改善に役立つ成分が配合されており、髪の成長サイクルを整えるサポートが期待できます。

ただし、妊娠中や授乳期はデリケートな時期であるため、選び方には特に注意が必要です。

具体的には、以下のポイントを満たす育毛剤がおすすめです。

  • 妊娠中・授乳中使用可と明記されている製品
  • ミノキシジルやプロペシア(フィナステリド)など、ホルモンに影響を及ぼす成分が含まれていないもの
  • アルコールフリー・無香料・無着色・防腐剤不使用など、低刺激で無添加処方の製品

ホルモン関連の成分が入った育毛剤を使用する場合は、産婦人科や皮膚科の専門医に相談しましょう。

また、髪の毛は1本ずつ成長サイクルが異なるため、育毛剤の効果を実感するまでには時間がかかります。

そのため、日々のスキンケアと同じように、コツコツ続けることが大切です。

刺激しないヘアケアに変える

頭皮や髪への過剰な刺激は、抜け毛や毛根へのダメージに直結するため、刺激しないヘアケアに切り替えましょう。

具体的に改善が必要なヘアケアは、以下のとおりです。

ケア項目推奨内容避けるべきポイント
シャンプー・低刺激
・ノンシリコンのものを使用
・週2回の頭皮クレンジング
強い洗浄力を持つ、硫酸系界面活性剤を含む製品の使用
洗髪温度36℃~38℃のぬるま湯で洗髪熱湯を使用して頭皮を刺激
ドライヤー頭皮から20cm以上離して、冷風ミックスで使用高温の熱風を長時間当てる
ブラッシング豚毛ブラシまたはスカルプブラシでやさしくケア強く引っ張るようなブラッシング方法
髪をまとめるゆるくまとめるタイトなポニーテールや三つ編みで、一日中まとめること

日々のヘアケアを見直し、刺激を最小限に抑えることで、薄毛の悩みを根本から改善できます。

妊娠中のAGA治療薬の使用は注意!

妊娠中のAGA治療薬の使用は注意!

妊娠中はどのFAGA(女性男性型脱毛症)治療薬も安全性が確立されていないため、使用を避けなければなりません。

注意が必要な治療薬を、以下の表にまとめました。

治療薬リスク
ミノキシジル胎児の心臓に強い負荷がかかる可能性が高い
パントガールホルモンバランスの乱れにつながるリスクがある
プロペシア胎児(特に男の子)の生殖器異常を引き起こすリスクが高い

すでに服用中の場合はすぐに中断し、産婦人科または皮膚科医に相談してください。

抜け毛対策は、先述したセルフケア方法を優先しましょう。

参考:妊活中・妊娠中にAGA治療はできる?胎児への危険性について解説|AGA専門医が教える発毛ブログ

妊娠期の薄毛で医療受診が推奨されるケース

妊娠中にみられる薄毛の多くはセルフケアで対策できるものですが、症状によっては皮膚科などの専門医の判断が必要なケースもあります。

医療受診が推奨されるケースは、主に以下3つの脱毛症状です。

脱毛の種類主な特徴考えられる原因医療受診を推奨する理由推奨される治療
円形脱毛症・円形または楕円形に髪が部分的に脱落
・かゆみや痛みは通常なし
・ホルモンバランスの乱れ
・自己免疫疾患
・過剰なストレス など
進行が早く、放置すると拡大する可能性があるため・ステロイド局所注射
・ステロイド外用薬・免疫抑制外用剤 など
FAGA(女性男性型脱毛症)・頭頂部もしくは前頭部の髪が徐々に細く、全体的にボリュームダウン・ホルモンバランスの乱れ
・過剰なストレス
・生活習慣の乱れ など
慢性進行性脱毛で、早期介入が予後改善につながるため・ミノキシジルの外用薬
※妊娠中は治療薬制限あり
・低出力レーザー療法(LLLT)
牽引性脱毛症分散的な薄毛強く髪の毛を引っ張る(ポニーテールや編み込みなど)こと原因を継続すると毛根がダメージを受け、永久脱毛になるリスクがあるため・髪型やヘアアレンジの変更
・低出力レーザー療法(LLLT)

各脱毛症の特徴に当てはまる場合は、早めに専門医の受診を検討しましょう。

参考:妊娠初期に抜け毛が増える原因を紹介|妊娠中にできる抜け毛対策や抜け毛がいつまで続くか解説|ベアAGAクリニック

妊娠の薄毛は適切な対策で改善できる

妊娠の薄毛は適切な対策で改善できる

妊娠期の薄毛は、ホルモンバランスの変化や栄養不足、睡眠不足、ストレスなど複数の要因が重なって一時的に起こる自然な現象です。

しかし、今回紹介した育毛剤の活用や簡単な頭皮マッサージなどのセルフケアを継続すれば、頭皮環境が改善し、薄毛の進行を抑えられます。

対策をするうえで大切なのは、無理をしないことです。

おなかの中の赤ちゃんとママの健康を第一に考えながら、マイペースにケアを行いましょう。

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五藤 良将(ごとう よしまさ)
五藤 良将
経歴:千葉県立東葛飾高校卒、防衛医科大学校医学部卒。その後に自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどの勤務を経て2019年9月に継承開業に至る。 研究分野:糖尿病、AGEs、動脈硬化、 免許・資格: • 医師免許、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医、日本医師会産業医、日本美容内科学会評議員著書、論文所属 • 医療法人社団五良会 竹内内科小児科医院 院長  • 医療法人社団五良会 理事長 専門領域: • 医療 > 外科・内科以外の診療科 > 皮膚科 • 医療 > 外科・内科以外の診療科 > 美容皮膚科