出産後に多い悩みの一つが、抜け毛です。
実際に、ある会社の調査によると、産後の髪の抜け毛や薄毛に悩んだことのある経験者は81.6%にのぼるとのこと。
「子どもを産んでから抜け毛が増えたかも」と、産後の抜け毛にお悩みの方もいるでしょう。
本記事では、産後の抜け毛は放置しても問題ないのか、医師監修のもとでわかりやすく解説します。
また、髪の毛が抜ける主な原因や、自宅でできるセルフケアも紹介します。
抜け毛の根本的な原因を特定し、自分に合った対策を始めましょう。
産後の抜け毛、放置はNG?
髪の毛が抜けていることに気づいた場合、このまま病院を受診せずに放置して良いのか不安になりますよね。
結論からお伝えしますと、産後の抜け毛はホルモンバランスの変化に伴い一時的に発生する症状であるため、気にしすぎる必要はありません。
ただし、場合によっては別の脱毛症を発症している場合もあるため、放置しすぎは禁物です。
以下では、産後の抜け毛に見られるサイクルや特徴、放置してはいけないケースを紹介します。
産後の抜け毛は出産後6カ月目まで続くことも
産後の抜け毛は、出産後のホルモンバランスの急激な変動が原因です。
そのため、ホルモンバランスの変化に沿って、以下のようなサイクルで抜けたり生えたりします。
- 出産後2~3カ月:徐々に抜け毛が増加する
- 出産後4~6カ月:抜け毛がもっとも増える
- 出産後7~12カ月:抜け毛が落ち着き、新しい毛が生え始める
このように、産後の抜け毛は出産直後から始まり、時間の経過とともに徐々に通常の毛の成長サイクルに戻っていきます。
また、産後抜け毛の症状には、以下のような特徴が見られます。
- 髪全体のボリュームダウン
- 地肌の透け
- 額の生え際あたりが後退
これらの抜け毛サイクルや症状に該当する場合は、産後特有の抜け毛である可能性が高いため、正しいセルフケアで対処しましょう。
1年経ってもひどいなら専門医へ相談を
産後から始まった抜け毛が1年経っても改善しない場合は、自己判断でケアを続けるのではなく、産婦人科への相談をおすすめします。
長期間続く抜け毛の場合、産後のホルモンバランスの乱れによる一時的なものではなく、以下のような別の脱毛症が考えられるためです。
脱毛症名 | 特徴 | 主な原因 |
---|---|---|
びまん性脱毛症 | 全体的に髪の毛の量が少なくなる | ・生活習慣の乱れ ・更年期に伴うエストロゲンの分泌量低下 |
女性型脱毛症(FPHL) | 頭頂部の髪が徐々に薄くなり、毛が細くなる | ・加齢 ・過度なダイエット |
牽引性脱毛症 | 分け目が広がり、生え際が薄くなる | ・髪に高負担な施術 ・引っ張るような髪型 |
円形脱毛症 | 円形または楕円形の脱毛斑が生じる | ・精神的 / 身体的ストレス ・自己免疫反応 |
専門医の診断をもとに、必要な治療や生活改善のアドバイスを受けることで、抜け毛の原因に対して的確に対処でき、早期回復が期待できます。
参考:【医師監修】出産・産後に起こる抜け毛の原因と対策|AGAスキンクリニックレディース
産後に抜け毛が増える主な原因
産後に抜け毛が増える原因はさまざまです。
以下では、産後に抜け毛が増える主な原因を7つ紹介します。
女性ホルモンの乱れ
産後抜け毛は、エストロゲンと深い関係があります。
エストロゲンとは、女性ホルモンの1種です。
髪の成長期を延長し、毛根を活性化させる働きがあり、髪にハリやボリュームを出しやすくします。
妊娠中には、胎盤で活発に生産されるエストロゲンですが、出産とともに分泌量は戻り、体内のエストロゲンの数値は急激に低下します。
この分泌量の変化は髪にも影響するため、通常は4年~6年で回るヘアサイクルが乱れ、髪の毛が一斉に抜け始める、という仕組みです。
さらに、抜けた毛は成長が止まる休止期に入ってしまうため、新しい髪が生えるまで時間がかかります。
これによって、長期的な薄毛の原因にもなるのです。
参考:産後の抜け毛が起こる原因とは?発生時期や対策方法も紹介【医師監修】|ヒロクリニック
母乳育児に伴う栄養不足
母乳を赤ちゃんに与え続けることで、母親自身の栄養が不足することがあります。
厚生労働省によると、授乳中は特に以下の栄養が不足するといわれています。
産後に不足しがちな栄養素 | 特に不足する栄養素 | 髪の毛における役割 | 髪の毛への影響 |
---|---|---|---|
ビタミン | 鉄分 | 血液を通して、髪の成長に必要な酸素や栄養素を毛根に届ける | 酸素や栄養供給が不十分となり、成長途中の髪の抜け毛を促進する |
ミネラル | 葉酸 | ・細胞分裂やDNA合成に欠かせない栄養素で、毛根の細胞が正常に成長するのに役立つ ・造血作用により頭皮の血行が促進され、髪の成長に必要な栄養素を届ける | ・毛根の細胞分裂が十分に行われず、髪の成長サイクルが乱れる ・血液中の酸素や栄養素の運搬能力が低下し、毛根への栄養供給が妨げられ、抜け毛を促進する |
参照:妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~ 解説要領(2021年3月)|厚生労働省
鉄分と葉酸が不足すると、毛髪の成長に必要な栄養素・酸素の供給や細胞分裂が妨げられ、抜け毛を招きます。
参考:産後の抜け毛はいつまで続くの? 対策と上手に乗り切る方法|FANCLオンライン
産後のストレス
産後は、以下のように育児にまつわる変化が重なり、メンタル面でストレスを抱えやすい時期です。
- 育児中心の生活
- 睡眠不足の常態化
- 体力・体形などの身体的変化
- 仕事への復職
ストレスが蓄積すると、髪の毛の成長に影響を与える血行不良や自律神経・ホルモンバランスの乱れにつながります。
例えば、ストレスにより血管が収縮し、毛根に十分な栄養・酸素が補給されなくなると、髪の成長がうまくいかず、抜け毛が増加します。
産後の生活変化による精神的負担は、髪の毛の栄養供給に悪影響を与え、髪の成長を阻害するため、心身の健康管理が重要です。
参考:産後の抜け毛はいつまで続くの? 対策と上手に乗り切る方法|FANCLオンライン
夜泣き対応による睡眠不足や疲労
出産してから1歳までは、赤ちゃんの夜泣きに対応するために、連日十分な睡眠が取れない状態が続き、疲労が重なる傾向にあります。
特に、抜け毛のピークを迎える出産後半年間は、夜中に何度も起きなければならず、1~2時間程度しか睡眠時間を確保できないケースも少なくありません。
頭皮の代謝を活性させる成長ホルモンの分泌は、入眠してから3時間が活発になるといわれています。
そのため、夜泣き対応で睡眠不足が続くと、ホルモン分泌のリズムが崩れ、抜け毛を促進することがあります。
参考:産後の抜け毛はいつまで続くの? 対策と上手に乗り切る方法|FANCLオンライン
無理な産後ダイエット
産後太りは、多くの母親が経験するものです。
復職や体力回復、メンタルの安定化など、さまざまな理由で産後にダイエットをする方も少なくありません。
しかし、以下のような産後ダイエットは、抜け毛を促進する原因になり得るため、注意が必要です。
- 極端なカロリー制限ダイエットに取り組む
- 負荷の高い過度な運動
- サプリメントを過剰に摂取する
専門医や栄養管理士の指導を無視し、無理な食事制限を行うと、栄養不足に陥り、抜け毛の増加につながります。
参考:産後の抜け毛はいつまで続くの? 対策と上手に乗り切る方法|FANCLオンライン
高齢出産
30代後半になると、プレ更年期の兆候が現れ、体内の代謝機能やホルモンバランスが若いころに比べて変動しやすくなります。
このような身体的変化がある中で出産した場合、出産後の体力回復が遅れることが多くあります。
また、高齢出産では、子宮口や産道が硬くなるため、難産のリスクも高まります。
更年期に伴う体内の状態や難産によって、出産で大きく消耗した体力が回復するまでに長い時間がかかることで、間接的に抜け毛や薄毛のリスクも高まってしまうのです。
参考:産後の抜け毛はいつからいつまで?原因や対策を説明|mamanico
頭皮環境の悪化
産後のホルモンバランスの乱れは、肌質にも影響することがあります。
出産前は問題なく使用できていたシャンプーやトリートメントが、突然合わなくなることも珍しくありません。
そのまま肌に合わないヘアケアアイテムを使い続けると、頭皮のバリア機能が低下し、乾燥や毛穴詰まりを招きます。
育児の忙しさで髪を洗う頻度が減ったりすると、皮脂や汚れが蓄積し、かゆみや炎症を引き起こしてしまいます。
これらの要因が相乗的に作用した場合、毛根への栄養や酸素の供給が不十分となり、抜け毛が増加することがあります。
産後の抜け毛を改善する対策・セルフケア
産後の抜け毛は、生活習慣や日々のケアを見直すことで改善できる場合があります。
ここでは、産後抜け毛の改善につながるさまざまなセルフケア方法を紹介します。
できるだけ睡眠時間を確保する
十分な休息は、ダメージが蓄積された髪の回復に欠かせません。
そのため、以下のように工夫をし、可能な限りまとまった睡眠を取るようにしましょう。
- 日中は赤ちゃんと一緒に仮眠する
- パートナー・家族と交代で寝る
- ヘルパーサービスを活用する
睡眠時間をしっかり確保できれば、免疫力の向上やストレスの低下につながり、抜け毛を抑えられます。
参考:産後の抜け毛はいつからいつまで?原因や対策を説明|mamanico
食事やサプリメントで栄養をバランス良く摂る
産後は、母乳育児や体力回復のために必要なエネルギーと栄養が増える一方、育児優先となり食事のバランスが崩れやすい傾向にあります。
抜け毛を防ぐためにも、以下のような成分はできる限り意識して取り入れることが大切です。
- たんぱく質
- ビタミン(ビタミンB群 / ビタミンC / ビタミンE / 葉酸)
- ミネラル(鉄分 / 亜鉛)
栄養バランスを意識した食事が難しい場合は、上記が含まれるサプリメントの活用もおすすめです。
ただし、授乳中に推奨されないサプリメントもあるため、事前に専門医に相談してから飲むようにしましょう。
栄養素をバランス良く摂ることで、毛根に十分な栄養が届き、髪の成長サイクルの正常化が期待できます。
ストレスをため込みすぎない
産後、慣れない育児や家事との両立でストレスがたまることは仕方ありません。
産後抜け毛を軽減するためには、ストレスを適度に解消し、ため込みすぎないことが大切です。
産後にできるストレス解消法としては、以下がおすすめです。
- ストレッチなどで体を動かす
- 読書など趣味の時間を取る
- 好きなものを食べる
- 家族や友人とたくさん会話する
ストレスが軽減されると、血行促進や自律神経・ホルモンバランスの安定化につながり、抜け毛の進行を抑えられます。
参考:産後の抜け毛はいつまで続くの? 対策と上手に乗り切る方法|FANCLオンライン
頭皮や髪にやさしいシャンプーに変える
市販のシャンプーの中には、強い洗浄成分や刺激性の高い化学成分が含まれているものもあり、産後の敏感な頭皮にとっては刺激が強く、頭皮の乾燥を促進します。
そのため、以下のような低刺激なシャンプーや、頭皮ケアに有効な成分が配合されたシャンプーを選びましょう。
- アミノ酸系・ベタイン系の洗浄力がマイルドなシャンプー
- 高保湿シャンプー
- グリチルリチン酸ジカリウムなど、頭皮の肌荒れ防止に有効な成分を含むシャンプー
産後1年間は、頭皮や髪にやさしいシャンプーに変えることで、頭皮の乾燥や炎症、毛穴の詰まりを防ぐことができ、抜け毛を抑えられます。
頭皮を刺激しないヘアスタイルにする
頭皮を刺激するようなへアスタイルにすると、頭皮に負担がかかり、血行が悪くなるだけでなく、毛根に物理的なダメージを与えます。
そのため、髪をまとめる際は以下の点に注意しましょう。
- タイトなポニーテールや三つ編みは避け、ゆるくまとめる
- ピン止めやヘアバンドで無理に引っ張らないよう、柔らかい素材を選ぶ
- 長時間まとめた状態にしない
髪や頭皮への負担を抑えることで、髪の毛が抜けにくい健康的な毛根環境を維持できます。
隙間時間で頭皮をケアする
赤ちゃんの睡眠時など、隙間時間を利用して頭皮のケアをすることも、抜け毛予防に有効です。
特に、以下のセルフケアがおすすめです。
- 専用の頭皮ケアローションやエッセンスを利用して頭皮を保湿
- シャンプー前のブラッシングで頭皮の汚れを浮き上がらせる
- 軽い頭皮マッサージで頭皮の血行促進
頭皮への適度な刺激により、血行を促進するほか、リラックス効果によりホルモンバランスを改善でき、頭皮の環境を整えられます。
育毛剤を活用する
育毛剤は、毛根を活性化し、血行促進や栄養補給をサポートする成分が配合されているため、産後の抜け毛対策として役立ちます。
産後に使用したいときは、以下のような育毛剤がおすすめです。
- アルコールフリーなど低刺激な育毛剤
- 香料や着色料、防腐剤などが含まれていない無添加の育毛剤
- エチニルエストラジオールなどの女性ホルモンを配合した育毛剤
ただし、授乳中の方は避けるべき育毛剤もあるため、専門医と相談しながら、自分の頭皮や髪の状態に合った育毛剤を選ぶことが大切です。
なお、育毛剤については「育毛剤の効果的な使い方|塗布するタイミングや注意点を解説」で詳しく解説していますのでご覧ください。
まとめ:産後の抜け毛は悩みすぎないで!できる対策から行いましょう
産後に多い抜け毛の原因と有効とされる対策は、以下のとおりです。
原因 | 対策 |
---|---|
・女性ホルモンの乱れ ・母乳育児に伴う栄養不足 ・産後のストレス ・夜泣き対応による睡眠不足や疲労 ・無理な産後ダイエット ・高齢出産 ・頭皮環境の悪化 | ・できるだけ睡眠時間を確保する ・食事やサプリメントで栄養をバランス良く摂る ・ストレスをため込みすぎない ・頭皮や髪にやさしいシャンプーに変える ・頭皮を刺激しないヘアスタイルにする ・隙間時間で頭皮をケアする ・育毛剤を活用する |
産後の抜け毛は原因を特定し、できることから適切に対策することで、早期に健康な髪を取り戻せます。
産後の抜け毛でお悩みの方は、できる範囲で生活習慣や毎日のヘアスタイル・ヘアケアを見直してみましょう。