女性の牽引性脱毛症|原因・症状・治し方などを解説育毛剤の種類

「分け目が目立つようになってきた」 「薄毛が気になるようになった」と感じたら、それは牽引性脱毛症かもしれません。

牽引性脱毛症とは、 髪を引っ張るような髪型が原因で、 世代を問わず女性に多く見られる脱毛症の1種です。

放置すると薄毛や抜け毛が深刻化し、髪が生えてこなくなるリスクがあります。

そのため、健康的な髪を保つなら、適切な方法で予防が必要です。

本記事では、 牽引性脱毛症の原因や症状に加え、改善・予防方法について詳しく解説します。

早期発見と適切なケアで、 美しい髪を取り戻しましょう。

牽引性脱毛症とは

牽引性脱毛症は、髪を長時間引っ張ることで頭皮に負担がかかり、抜け毛を引き起こす脱毛症の一種です。

特定の部位に負担がかかることで、その部分の毛根が弱まって、炎症や血行不良を引き起こし、結果として髪が抜けやすくなります。

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牽引性脱毛症は世代を問わず発症する

牽引性脱毛症は、特定の年齢層に限定されるものではありません。

子どもから大人まで、幅広い世代で発症する可能性があります。

仕事やファッションの都合で、常に髪を引っ張るような髪型をしている場合、発症のリスクが高まります。

幼いころからポニーテールやお団子ヘアなど、髪を強く結ぶ習慣がある子どもにも見られることがあります。

髪に負担がかかるヘアアレンジを繰り返すことで発症する可能性が高まることを、覚えておきましょう。

女性に牽引性脱毛症が多い理由

牽引性脱毛症は、男性よりも女性に多く見られる傾向がある症状です。

女性が発症しやすい原因は以下のとおりです。

主な原因詳細
ヘアアレンジの多様性女性は、男性に比べてヘアアレンジの種類が豊富です。
ポニーテール・お団子ヘア・編み込みなど、引っ張るような髪型をする機会が多く、頭皮への負担が大きくなりがちです。
ヘアケアの頻度女性は、ヘアカラーやパーマなど、髪に負担のかかる施術をする頻度が高い傾向があります。
これらの施術によって髪や頭皮がダメージを受けやすくなり、牽引性脱毛症のリスクを高めます。
エクステやウィッグの使用エクステやウィッグは、手軽にヘアスタイルを変えられる便利なアイテムですが、装着時に髪の毛を強く引っ張ることがあるものです。
長期間の使用や、誤った装着方法によっては、牽引性脱毛症を引き起こすことがあります。
エクステの装着は、牽引性脱毛症の主な原因のひとつとして有名です。

上記の要因が複合的に重なると、女性は牽引性脱毛症を発症しやすくなります。

もちろん、上記の要因に当てはまるなら、男性でも牽引性脱毛症は発症します。

特に仕事の都合などで、強く結ぶ髪型にする機会が多い人は注意が必要です。

牽引性脱毛症の症状

牽引性脱毛症は、初期には自覚症状が少ないため、気づきにくいことがあります。

しかし、進行するとさまざまな症状が現れるうえに、放置し続けることでより深刻化してしまいます。

以下に、牽引性脱毛症の主な症状をまとめました。

症状詳細
分け目の広がりいつも同じ分け目にしていると、その部分の髪が引っ張られ続け、分け目が徐々に広がってきます。
生え際の薄毛ポニーテールやお団子など、生え際の髪を強く引っ張る髪型をしていると、生え際が後退していきます。
部分的な薄毛特定の箇所に負担がかかる髪型を続けていると、その部分だけが薄くなることがあります。
例えば、エクステをつけている部分や、いつもヘアピンで留めている部分などが挙げられます。
髪の毛が細くなる髪が引っ張られることで毛根がダメージを受け、生えてくる髪の毛が細く、弱々しくなってしまいます。
抜け毛の増加通常よりも抜け毛が増えてしまいます。
特に、髪を洗う時やブラッシングをする時に、大量の髪が抜ける場合は注意が必要です。
毛包の付着抜けた髪の毛に、毛包と呼ばれる白いものが付着していることがあります。
これは、髪が強く引っ張られて根本から抜けた場合にみられる症状です。
毛球の変形髪が引っ張られて抜けた場合、毛根の先に、ひげ根と呼ばれる細い毛が見られることがあります。
これは、成長途中の髪の毛が抜けてきてしまった状態です。
頭皮の炎症髪を強く引っ張ることで、頭皮に炎症が起こり、かゆみ・赤み・フケなどの症状が現れることがあります。

これらの症状に気づいたら、牽引性脱毛症の可能性を疑い、早めの対策を心がけましょう。

もし牽引性脱毛症を放置すると、毛根が完全にダメージを受け、髪が生えてこなくなることも考えられます。

牽引性脱毛症の主な原因

牽引性脱毛症は、特定の髪型や習慣によって髪の毛が引っ張られ、頭皮に負担がかかることで発症します。

牽引性脱毛症の主な原因は以下のとおりです。

  • 髪を引っ張るような髪型
  • ヘアアイロンの過度な使用
  • エクステやウィッグの過度な使用
  • 帽子やヘアバンドの長時間着用
  • パーマやカラーリングの繰り返し
  • 睡眠不足や栄養バランスの偏り

上記の原因に心当たりがある人は、注意が必要です。

それぞれの原因について、順番に詳しく解説していきます。

髪を引っ張るような髪型

ポニーテール・お団子ヘア・編み込みなど、髪の毛を強く引っ張る髪型は、牽引性脱毛症のもっとも一般的な原因です。

特に、毎日同じ髪型を繰り返していると、特定の場所に負担が集中し、抜け毛や薄毛につながりやすくなります。

毛根がダメージを受け、炎症を引き起こすこともあります。

ヘアアイロンの過度な使用

ヘアアイロンは、手軽にヘアスタイルを整えることができる便利なアイテムです。

しかし、高温の熱と物理的な力で髪を挟んで引っ張るため、髪や毛根に大きな負担をかけます。

特に、濡れた髪にヘアアイロンを使用したり、同じ箇所に何度も繰り返し熱を当てたりすると、髪のタンパク質が変性し、ダメージを受けやすくなります。

日常的なヘアアイロンの使用は牽引性脱毛症の原因となる可能性があるため、使用頻度を減らす、温度設定に注意するなどの対策が必要です。

エクステやウィッグの過度な使用

エクステやウィッグは、手軽にヘアスタイルを変えることができるため、おしゃれを楽しむ女性に人気があります。

しかし、エクステやウィッグを装着する際には、自毛に編み込んだり、接着剤で固定したりする必要があるため、髪や頭皮に大きな負担がかかります。

また、長期間同じエクステやウィッグを装着し続けると、自毛が引っ張られ続け、牽引性脱毛症を引き起こしかねません。

エクステやウィッグを使用する際には、装着期間を短くする、重いエクステを避けるなど、頭皮への負担を軽減する工夫が必要です。

帽子やヘアバンドの長時間着用

帽子やヘアバンドは、紫外線対策やファッションアイテムとして日常的に使用する方も少なくありません。

しかし、長時間帽子やヘアバンドを着用していると、頭皮が圧迫され、血行が悪くなることがあります。

また、帽子やヘアバンドが髪の毛を引っ張ることで、牽引性脱毛症の原因となるリスクが高まります。

特に、締め付けの強い帽子やヘアバンドは、頭皮への負担が大きいため、長時間の着用は避けましょう。

外出時は帽子などで紫外線から頭皮を守ることも大切ですが、通気性の良い素材を選び、適度に帽子を脱いで頭皮を休ませるようにしましょう。

パーマやカラーリングの繰り返し

パーマやカラーリングは、髪の毛に薬剤を使用するため、頭皮や毛根に大きな負担をかける点に注意しなければなりません。

特に、短期間に何度もパーマやカラーリングを繰り返すと、髪のタンパク質が破壊され、ダメージを受けやすくなります。

また、パーマ液やカラー剤が頭皮に付着すると、炎症を引き起こし、抜け毛や薄毛の原因となることもあります。

パーマやカラーリングを行う際には、施術間隔を十分に空ける・頭皮に優しい薬剤を選ぶなど、頭皮への負担を軽減する対策が必要です。

睡眠不足や栄養バランスの偏り

健康な髪の毛を育てるためには、十分な睡眠とバランスの取れた食事が欠かせません。

睡眠不足や栄養バランスの偏りは、頭皮の血行不良や毛母細胞の機能低下を引き起こし、髪の成長を妨げる原因になります。

特に、ダイエットなどで極端な食事制限をすると、髪の毛に必要な栄養素が不足し、抜け毛や薄毛につながることがあります。

規則正しい生活習慣を心がけ、バランスの取れた食事を摂るようにしましょう。

牽引性脱毛症の治し方

牽引性脱毛症は、早期に適切な対策を行うことで改善が期待できます。

有効的な治し方は、以下のとおりです。

  • 皮膚科での治療
  • 生活習慣の改善
  • ヘアスタイルを見直す
  • 頭皮に優しいシャンプー・トリートメントを選ぶ

本セクションでは、具体的な治し方について解説します。

皮膚科での治療

牽引性脱毛症が疑われる場合は、まず皮膚科を受診しましょう。

医師による診断を受け、適切な治療を受けることが回復への最大の近道です。

皮膚科では、主に以下のような治療が行われます。

治療方法詳細
外用薬炎症を抑えるステロイド薬や、発毛を促進する外用薬が処方されることがあります。
内服薬必要に応じて、ビタミン剤やミネラル剤などが処方されることがあります。
注入療法発毛を促進する成分を頭皮に直接注入する治療法です。

これらの治療法は、症状や進行度合いによって異なります。

医師と相談し、ご自身に合った治療法を選択しましょう。

生活習慣の改善

牽引性脱毛症の改善には、日々の生活習慣を見直すことも重要です。

以下の点に注意して、自分の生活を見直してみましょう。

取り組み例詳細
バランスの取れた食事髪の成長に必要な栄養素(タンパク質・ビタミン・ミネラルなど)をバランス良く摂取しましょう。
十分な睡眠睡眠不足は、髪の成長を妨げる原因となります。
毎日6~8時間の睡眠時間を確保しましょう。
ストレスの軽減ストレスは、血行不良を引き起こし、髪の成長を阻害する可能性があります。
適度な運動や趣味などを取り入れ、ストレスを解消しましょう。

牽引性脱毛症に限らず、生活習慣の見直しはさまざまな薄毛・抜け毛に効果が期待できます。

規則正しい生活リズムの維持や、バランスの良い栄養の摂取など、日々の生活の改善を目指しましょう。

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ヘアスタイルを見直す

牽引性脱毛症の原因となる髪型は避けることで、症状の改善が見られます。

具体的には、以下のような点に注意しましょう。

対策詳細
髪を強く引っ張る髪型は避けるどうしても結ぶ必要がある場合は、緩めに結ぶようにしましょう。
分け目を頻繁に変える同じ分け目を続けると、その部分の頭皮に負担がかかりやすくなります。
パーマやカラーリングを控えるパーマやカラーリングは、髪や頭皮に大きな負担をかけます。
頻繁に行うのは避けましょう。

普段のヘアアレンジを工夫するだけでも、髪への負担を減らせるうえに、牽引性脱毛症を予防できます。

頭皮に優しいシャンプー・トリートメントを選ぶ

シャンプーやトリートメントは、頭皮や髪に直接触れるものなので、できるだけ刺激の少ないものを選んでください。

以下の点に注意して、選ぶことが大切です。

種類詳細
アミノ酸系シャンプーアミノ酸系シャンプーは、洗浄力がマイルドで、頭皮への刺激が少ないのが特徴です。
シリコンフリーの製品シリコンは、髪の表面をコーティングする成分ですが、頭皮の毛穴を詰まらせる可能性があります。
添加物が少ない製品香料や着色料などの添加物は、頭皮への刺激となることがあります。

また、シャンプーをする際は、爪を立てずに、指の腹で優しくマッサージするように洗うと良いでしょう。

すすぎ残しがないように、しっかりと洗い流すことも忘れないようにしましょう。

牽引性脱毛症の予防方法

牽引性脱毛症は、日々の生活習慣を見直すことで事前の予防も可能です。

具体的な予防方法には、以下の3つがあります。

  • 髪に負担をかけない結び方にする
  • 頭皮マッサージを行う
  • 育毛剤や頭皮美容液でヘアケアする

それぞれの予防方法について、以下で順番に解説します。

髪に負担をかけない結び方にする

ポニーテールやお団子ヘアなど、髪を強く引っ張る髪型は、牽引性脱毛症の原因となりがちです。

髪を結ばないことが一番の予防になりますが、それは難しいという方もいるはずです。

髪を結ぶ際には、以下の点に注意しましょう。

種類詳細
緩く結ぶきつく結びすぎないように注意しましょう。
長時間同じ髪型をしない長時間同じ髪型を続けると、特定の箇所に負担がかかりやすくなります。
ヘアゴムの種類に注意する細いゴムや金属製のヘアアクセサリーは、髪を傷つけやすいので避けましょう。
シュシュやシリコン製のヘアゴムなど、髪に優しい素材のものを選ぶのがおすすめです。
髪型を頻繁に変える毎日同じ髪型ではなく、ダウンスタイルを取り入れるなど、変化をつけましょう。

また、就寝時には髪をほどいて、頭皮を休ませることも大切です。

ヘアアレンジのバリエーションを増やすきっかけにもなるので、ぜひ頭皮に負担をかけすぎないさまざまな髪型を試してみてください。

頭皮マッサージを行う

頭皮マッサージは、血行を促進し、毛根への栄養供給を助ける効果があるだけでなく、牽引性脱毛症の予防にも効果的です。

具体的には、以下の手順でマッサージを行いましょう。

  • シャンプー時や、髪が乾いた状態で行います。
  • 指の腹を使って、頭皮全体を優しく揉みほぐします。「押す・こする・もむ」の3つの動きを組み合わせてほぐしましょう。
  • 生え際から頭頂部・側頭部・後頭部へと、頭皮全体をまんべんなくマッサージします。
  • 1回1〜3分、1日3回を目安に行うとより効果的です。

爪を立てず、指の腹で優しくマッサージすることがポイントです。

マッサージオイルや育毛剤を使用して行うのもおすすめです。

育毛剤や頭皮美容液でヘアケアをする

育毛剤や頭皮美容液は、頭皮環境を整え、発毛を促進する効果が期待できます。

牽引性脱毛症の予防として、日々のヘアケアに取り入れてみましょう。

ただし、育毛剤や頭皮美容液は適切な使い方を知っておくことが大切です。

使用前には製品ごとに記載されている使用方法をよく読んで、その通りに使用し、万が一頭皮に異常を感じた場合は、すぐに使用を中止しましょう。

特に育毛剤は、使用者の肌質や体質によって副作用が生じる場合があります。

トラブルが生じた際は、専門医に相談しましょう。

まとめ:女性に多い牽引性脱毛症は早期発見と適切なケアで改善可能

牽引性脱毛症は、早期に発見し、適切なケアを行うことで改善が期待できます。

日々のヘアスタイルやヘアケアを見直し、頭皮への負担を軽減することが重要です。

症状が気になる場合は、早めに皮膚科を受診し、専門医の診断を受けるようにしましょう。

生活習慣の改善や、育毛剤・頭皮美容液を使ったケアも効果的です。

ヘアアレンジをする機会が多い女性にとって、牽引性脱毛症はとても身近な症状です。

適切な予防を行うことで、発生を未然に防ぎ、健やかな髪を保ちましょう。

ABOUT US
五藤 良将(ごとう よしまさ)
五藤 良将
経歴:千葉県立東葛飾高校卒、防衛医科大学校医学部卒。その後に自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどの勤務を経て2019年9月に継承開業に至る。 研究分野:糖尿病、AGEs、動脈硬化、 免許・資格: • 医師免許、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医、日本医師会産業医、日本美容内科学会評議員著書、論文所属 • 医療法人社団五良会 竹内内科小児科医院 院長  • 医療法人社団五良会 理事長 専門領域: • 医療 > 外科・内科以外の診療科 > 皮膚科 • 医療 > 外科・内科以外の診療科 > 美容皮膚科